「私は前から、昴は恵が好きなんだろうな、って思ってたけど?」


「なにそれ、詩織がそんな風に思ってるなんて知らなかったし」


「誰が見たってそう思うでしょ。


昴、早く告っちゃえばいいのに、ってヤキモキしてたし」


「でも、昴は愛ちゃんとつきあってたし、私は裕和とつきあってたし。


その時点でもう、昴は運命の相手じゃなかったんだよ」


「じゃあ、恵は須川さんと結婚するってことか」


「そうだけど?」


「いいのかなー、昴きっと悲しむよ」


「あのさ、私は裕和と結婚するんであって、昴は単なる同期だから」


「昴きっと傷つくだろうなー」


「詩織はどっちの味方なのよ?」


「恵と昴の味方だけど」


「この話はおしまい、もう夏休みに裕和が私の実家へ挨拶するってことになってるから」


「えっ、じゃあプロポーズ、オッケーしたんだ?」


「そうだよ、昨日電話して」


新潟出張から帰った日曜の夜、私から裕和に電話して、


「よろしくお願いします」


って伝えた。


『よかった、もう無理かと思ってたからさ』


裕和は、心から安心したような声だった。


これでいいんだ。


私は自分に暗示をかけた。