「ごめん昴、私は・・・」


「須川さんにプロポーズされたからやろ?」


「え?」


「しかも、須川さん東京へ異動になるなら、なんも問題ないわな」


「そうだよ」


「悪かったな、忘れてくれてええから」


そんなこと言われても、もう忘れられないよ。


でも、なかったことにすれば、丸くおさまるんでしょ?


「うん」


「あっさり認めんなや」


「ごめん」


「雨やんだな、送るわ。


自転車ふくタオル出すな」


昴は、どこまでも優しい。


本当は、つらいはずなのに。


「あ、資料忘れんようにな。


何しに来たんかわからへんで」


どうして笑ってられるの?


なんて声をかければいい?


「忘れないよ」



資料も、キスも、忘れないよ。



「ほんま、悪かったな。


新潟出張で告白しようって思ってたんやけど、早まったわ」


「なにそれ、公私混同もいいとこじゃん」


「新潟行けば、俺と過ごしてた時のこと思い出して、成功しそうな気がしたんやけどな。


停電でおびえてるメグがかわいすぎて、理性ぶっ飛んでしもた」


「理性は大事なんだからね」


「今だって、メグにふれたいのを必死におさえてるんやで」


「え?」


「冗談や」


昴の横顔は、どこかさみしそうだった。