昴の余計な進言のせいで、新潟出張は現実のものになった。


どんな手をつかったのかしらないけど、7月の金曜日に決まった。


無駄な出張にならないように、レポート提出までしなきゃいけない。


「昴、なに考えてるんだろ」


「昴は、楽しく仕事がしたいだけなんじゃない?」


7月に入り、梅雨まっただ中の金曜日、久しぶりに3人で飲むことになった。


議題は、詩織がつきあってる課長のこと。


っていうか、単に詩織のノロケ話を聞かされるだけ。


「昴、遅いなー」


「あっ、いま会社出た、ってメッセージきてる」


「しょうがないな、もう少し待つか」


「だね」


詩織は、東京本社へ異動してきて、直属のイケメン課長に一目惚れした。


なんだかんだ理由をつけて接近し、告白も成功し、つきあい始めたばっかり。


「課長の部屋、めっちゃオシャレだったの」


「いいじゃん、バツイチだけど包容力あるってことでしょ」


「そうそう、あー、この恋が最後の恋にならないかなー」


「最後の恋?」


「結婚したら、もう恋愛しないでしょ」


「詩織、もう課長との結婚考えてんの?」


「え、だって私たちもう30才になるんだよ。


そろそろ焦ってもいいんじゃない?」