「恵!」


裕和が、手をあげながら私を呼んだ。


「おかえり」


「なんだ、浦野も一緒か」


「すんません、僕は彼女を迎えに来てまして」


「そりゃそうだよな、長谷部さんだろ?


みかけてないけど、同じ新幹線なのか?」


その時、高くてかわいらしい声が聞こえた。


「昴くーん」


キャリーバッグをカタカタいわせながら、小柄でショートカットの子が歩いてきた。


「愛、お疲れさん」


彼女、「愛ちゃん」っていうのか。


「あれ、須川課長も一緒だったんですね」


「そ、俺は東京本社にいる彼女に会いに来た。


せっかくだから、4人で昼飯でも食べるか?」


「いいっすね」


「いいんですか、課長?」


「これも何かの縁だ、おごるよ」


「やった、良かったね昴」


「ほんまやな」


昴は、愛ちゃんのキャリーバッグをさりげなく持つと、裕和と私のあとについてきた。


「どこ行く?」


「僕は、カレー以外なら何でもいいです」


「なんだ浦野、もうカレーに飽きたのか」


「課長、お言葉ですけど、平日はほぼカレーなんすよ。


好きですけど、休日くらいはカレー以外を食べたいですわ」