『恵、もう本社着いた?』


裕和からのメッセージでスマホが震えて、我に返った。


入社3年目に裕和から告白されて、つきあいはじめた。


裕和は大阪工場の課長で、入社2年目で私が大阪工場へ異動になってから知ってたけど、まさかつきあうことになるとは思ってもいなかった。


裕和は3歳上で、イケメンで仕事のできる課長として社内で知らない人はいない有名人だった。


ケンカもしたりしたけど、週末はほぼ同棲状態で、なんとなくこのまま結婚するのかな、と思ったりした。


まさか、5年近くつきあうとは思わなかったけど。


そして、ここにきて大阪と東京で遠距離恋愛することになるとは思わなかったけど。


『もうすぐ着くよ』


返信しながら、これからの仕事のことを考えた。


ずっと憧れてた、東京本社での開発業務。


まったく同じタイミングで昴と詩織も東京本社勤務になる偶然を、運命だとはまだ感じていなかった。


しかも、昴は開発部でまったく同じ職場。


詩織もマーケティング部だから、わりと近い。


私と詩織は実家暮らしに戻り、昴は東京でアパート暮らし。


昴の引っ越しの手伝いで、久しぶりに3人で集まったのは、3月末だった。