「好きって言って…?」

同棲して2年、急に言われたこの言葉。酔って帰ってきた晴斗の第一声がこれだった。

「え、嫌だよ。恥ずかしいし…(小声」

「なぁ、琴子。本当に俺のこと好きか?」

この時、この言葉に素直に好きだって言えばよかった
あんなことになるなんて思ってもみなかった

「どうしてそんなこと聞くの?
言わなくても私のことは分かるんじゃなかったの?」

”琴子の気持ちは俺ならわかる”
そう言ってたのに

「あぁ、わかる。」

「じゃあ…!「今は、お前が何を考えているのか分からないんだ…!」」

「なに、それ…?」

「これ、気休めでもいい。書くだけでいいんだ。
俺の気休めとして書いてほしい。俺のことが好きなら、書いてくれ」

机に置かれたのは婚姻届けだった

気休めか…。私は気休めなんかで付き合ってない。真剣なのに

「いや、書かない。結婚するわけでもないのに書きたくない」

「もう、お前がわからないんだ」

「はぁ…?わからないのに、こんな紙切れに書かせるの?」

「…かみ、きれ…って」

私を睨む晴斗の目に優しさなんてなかった

「あっそ。もういい、琴子の気持ちは分かったよ。」

「なにが?!私の何がわかったっていうの?!」

「もういい!!喧嘩するために見せたわけじゃない。ごめん、頭冷やしてくる。
さっきの忘れて…」

この時、無理にでも止めるべきだったとか、

泣きそうな、悲しそうな顔でどんな気持ちだったのかとか、

後悔しても遅かった


その日、晴斗が帰ってくることはなかった