「ちょっと男子ぃー?早く手伝ってよ」


「なに言ってんの?動かしてるよ?」


「動かしてるの口だけでしょうが。手うごさしなさいよっ!」


小学校生活、最後の夏が終わって秋が来た頃。学習発表会がある。これは学校行事の一つで、全員強制参加。


私たちはミュージカルをやることになった。

だからいつもより準備が大変だった。女子は小学校で最後の発表会だもんと張り切ってるけど、 

男子たちはめんどくさそうだった


しっかりやらず笑っていた男子たちにさっきよりきつめに注意しようと思ったら、とある男の子が動いた。

内藤佐伯。

彼はちょいワルで、すぐにからかってくる。

だけど顔が整っているため、女子から人気だった。

私は他の男子たちに叱ったけど、


佐伯だけは動いただけでなにもしなかった。


なんなの?あいつって思ってにらんでいると目が合ってしまった!


「へぇー、俺を睨めるなんていい度胸してるね」

(ヤバイ!つい睨んでしまった!どうしよう。またからかわれるっ!)

このときはだいたいからかってきたり、意地悪したりする。

だけどいつもより違う感じがした。


どんどん近づいてくる。

「またからかうの?いい加減に止めてよ」

え?ちょちょちょ。


顔が目の前にあった。


唇が重なってしまった。

幸い皆は外に遊びにいってて私たちだけだった。


「...なんでっ、そんなこと」


「お前が好きだから」


え?今なんて言った?


聞き間違いじゃなければ好きって聞こえたけど。


「好きだよ。夕陽」

あぁ、聞き間違いなんかじゃ無かった。


だけど私は佐伯にからかわれるだけでなんの関係もない、恋が何かも今の私には分からなかった。


「ドキッとしただろ」

「し、しししてないしー」

(やっぱりからかってきた)

「嘘つくの下手。顔真っ赤だぜ?」

「っ!...」

「で?返事は?」

「えっ?」

「えっ?じゃねぇーよ返事だよ。返事」


「えーっと...時間ちょうだい?」


「...分かった。でも明日までな。守れなかったら、もっかいキスする。」


出た。意地悪なのに大人っぽいところ

「ハァッ?小学生でキスとかまずあり得ないのに二回もできるわけないじゃん!」

「それがそうでもないんだぜ?なんならもっかいやってもかまわないが。」


「っ!」

「まぁ、ぜってぇに落としてやるよ。」


そういって教室を出ていってしまった。

ここから私は一歩も動けなかった。足に力が入らなかった。


「あんな顔してするのは反則っ...」

そう思いながらどうしようと思った。