常盤の娘

「いや、俺はホラー映画の方が好きだけど。高校時代の常盤は恋愛物が好きだったろ。そういった感じの本ばかり読んでた」
ああ、そういうこと。常盤の顔に薄い笑みが戻る。
「大学に進学してから、楽しめなくなったの。私は常盤グループの一人娘だもの。恋愛結婚なんて夢物語だって気づいちゃって」

兄がまだ生きているなら、あるいは私が兄の代わりになれたならともかく。兄はあの交通事故で死んだし、私には常盤を背負うだけの力がなかった。常盤が代々グループを世襲してきた。それなのに兄を失い、今の常盤にはこの巨大グループを継げるだけの逸材はない。内にないなら、私の結婚相手として外から引っ張ってくるしかない。父が拾ってきた才能の石と結婚し、玉になるまで支えるのが、私の常盤の娘としての役目だ。