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常盤純花は戸惑っていた。古い記憶だった。病室の細部や曾祖母の顔はぼやけていた。絵本の題名は五歳の私の細い腕で隠されていた。それなのに死の間際とは思えないほど、はっきりとした曾祖母の声が鮮明に耳に焼き付いていた。あんな遠い昔の、曾祖母との記憶。とうの昔に忘れたかと思っていたのに……どうして今?いや、むしろ今だからか。