「あ、そうそう、柴田先生今週末、お暇ありませんか?大学の近くに、僕の友人が、カフェ、開いたんですよ。次の日曜日がオープンでして‥」

「村上先生、せっかくですけど、来週は、ちょっと‥。義理母が、入院しておりますので、その用事が‥」

私は頭を下げた。

あ、それは大変だ、と、村上先生もすんなりと引き下がってくれた。

入院したのは本当だけれど、ほっとした。
この方のお誘いにはいつも断るのに時間がかかる。




お二人が研究室を出たあと、

スマホからメールの着信音がした。


つまらぬ広告かと
思いつつ
窓辺にもたれてスマホを開けると

あ!


「えっ!レッドイーグルのファンイベント!!!開催!!!」

私はスマホを二度見した。



7月に日本でファンクラブイベントを開催するお知らせだった。

(やった!やった!由乃ちゃんもこりゃ今頃興奮してるな‥!)
私もウキウキしてしまった。


その時、ふと、ある人物が頭をよぎった。


まさか、ファンクラブまで入ってないよね‥


私はちらりと、窓から高村先生がいる教室を覗き見た。

彼はいた。
生徒達はもうお昼に行ったのだろう。
授業の片付けをし終わった先生が光る端末を操作している背中が見えた。

端末をじっと見つめているようだ。


(まさか、ね。まさかイベント告知のメール見てたりしないよね)


しばらくその姿勢だったが、
何かおもいついたように
彼は顔を上げて、突然
窓の方に駆け寄り、
私をまっすぐに見上げ、私を捉えた。

不意打ちに、隠れる隙もなかった。



え
嘘でしょ⁈⁈

間違いなく、三階の私を見ていた。


ここが、私の部屋だって、
知ってたの‥??




高村先生は
私を見つけ、笑顔でスマホを指差す。
見た?見た?と、ジェスチャーで。

私もめちゃくちゃ動揺したまま、
とりあえず頷いた。


次に彼は、自分を指差し
私の方へ長い腕を差し出してきた。


そっちに、行きます、と。


く、くる‥⁈
来るの⁈