「貴方とも久しぶりね。‥何年ぶりかしら。
娘さんが産まれる前だから、18年くらいぶりかしら?
娘さん、綺麗ね。奥さんも」

「娘と妻、いや、元妻は、血は繋がってないよ」

「あら、そうなの。じゃあ娘さん、義理の母に付いていくの?
紺から久しぶりに連絡があったと思ったら、
フランスで既婚女性と、その娘さんと暮らすことになったって聞いて驚いたけど、まさか貴方の娘さんだとはね。皮肉なもんね」

「君と別れてから、結婚したから、娘を見るのは初めてだったね。
全く君の弟はたいしたもんだよ。
娘がどこの大学に行って、
どこに住むか、
大学までの道のりが暗くないか、
大学資金の支払いプランまで
びっしり書いてよこしてきたよ」

「まあ、昔から
責任感はあった子だけど、貴方の大事な娘さん預かるんだからそれなりの覚悟してるはずよ。お父さんが二人できたようなもんね」

「あんな、イケメンなのにわざわざ人妻選ばなくてもよりどりみどりだろうにさ。とばっちりだよ」

「たしかにあの子は顔もいいけど、女を取っ替え引っ換えするような子じゃないわ。
苦労もしてたわよ。
だけど、貴方が手離したくないなら、あの子だって引き下がるつもりだったと思うわ。
なぜ手離したの?」


「とんでもない!あいつが引き下がるもんか!逆に簡単に引き下がるくらいなら最初から関わってほしくないよ!
‥‥病気になって、もし、俺が死んだら、
娘が一人になることに気づいたんだ」


「馬鹿ね。死ぬような病気じゃないわよ。
来週には退院できるわよ」

「それは、わかってる。
だけどね、あまりにも俺は一人じゃ
なんにも出来ない。甘え過ぎていた事に、
気づいた。
気がつかないうちに、妻も娘も、なんにもしてやれてない男になってたんだ」