触れた瞬間、男の子は顔を上げた。
「ごめんっ、ほんとにごめん!ゆ、許してくれっ、っ」
彼の頬は涙に濡れていた。
びっくりした。
だって、ほんとに、さっき私のこと、嘲笑ったのに。
でも、この涙は本気のような気がして。
彼が何かに堪えているのはめに見えて分かる。
これは、冗談なんかじゃない、涙なんだと、
そう思った。
私は地面にしゃがみこんで、右手の人差し指をアスファルトの上に置いた。
そして、ゆっくりと、
『い い よ』
と書くようにアスファルトを撫でる。
すると彼もしゃがみこんだ。
こうすると身長の差が変わらなくなる。
「君、名前は、榛名小町、で合ってるよね?」
私は首肯く。病室の名札でも見たのかな?
「俺は海崎幸太(かいざきこうた)」
彼は私と同じようにアスファルトの上に漢字を書いた。
「15歳。中3。よろしく、小町」
彼は涙の跡のある顔をすこしだけ緩めた。
この時、この瞬間、彼は私の心に落ちてきたのだった。
