が、走り出した足はすぐに信号によって止められる。青信号が点滅していてこのままだと行けるかと思ったがやはりすぐに赤に変わってしまった。
「あー遅刻するー。」
「んーお!佑久じゃーん」
「あ?あ、琉空じゃん、よお」
突然現れたのは最近仲良くなった同じクラスの琉空だった。こいつは毎日遅刻している遅刻常習犯だ。やばいな、こいつがいるということは俺もついに遅刻か。今までに遅刻したことはなかった俺が。
「なーにしょぼくれてんだよ」
「やー俺もついに遅刻か、て思うとな」
「はぁ??あ、俺がいるからか。残念、今日は日直だからいつもより早く家出てんだ。」
「おっまじか!なら大丈夫そうだな」
琉空の言葉にホッとしていつも通りのスピードで歩いていると校門前でチャイムが鳴った。
「え?」
「あれ?」
二人同時に固まり、すぐに顔を見合わせ走り出す。
やっぱ遅刻じゃねぇか!!
ゼエハアと肩で息をしながら教室に入ると丁度出席確認を終えたところだった。
「おー佑久。琉空はいつも通りとしてお前が遅刻とか珍しいな。」
「いや、こいつがいつもより早く家出たとか言うんで……」
「えー俺のせいかよ。つか先生いつも通りって!」
教室中に笑いが響く中でしょぼくれながら席についた。琉空はやっぱりいつも通り遅刻しクラスメイトや先生にからかわれている。
「佑久、おつかれさん」
「おー梨沙ー、あーしょっくー」
隣の席にいた梨沙がニコニコしながら肩を叩く。痛え、と呟きながらもいつも以上に走って疲れた体を机にへばらせる。先生が連絡を伝えている声を遠くに聞きながら俺は少しの眠りについた。

「ちょ、佑久、佑久……っ!」
「んーあー?」
目を覚ますと焦った感じで俺の体をバシバシ叩く梨沙とまたも笑い声に包まれたクラスメイトが目に入る。黒板の方を見れば呆れ顔の先生がいた。先生の後ろには長々と数字が並んでいて今が数学の授業中なのかと理解する。普段授業中寝ていても起こさない梨沙が俺を起こしたということは当てられたのか?寝ぼけがちにゆっくり梨沙を見るとため息をついて問題を教えてくれた。
「あーわりぃ。」
「いーよ別に。先生に怒られんの私じゃないし」
「嫌味か。こんにゃろ」
さっさと問題を解いた俺は席から立ち上がり問題の書かれた黒板に向かう。
「これ書けばいいんですか?」
「えぇ。」
偉そうな女教師が腕を組んで俺を見据える。この女教師には腹が立つから正直苦手だ。
スラスラと問題を解いて黒板に答えを記していくと後ろのクラスメイトたちがざわめきだした。全ての問題を解き終わり先生を見れば「合ってます」とため息をこぼされる。教室中から拍手を浴びながら俺がまた席につくと梨沙がノートを見せてくれた。面倒だなとは思ったがノートを受け取り自分のノートに写した。
授業が終われば琉空がやってきてさっきのことを騒ぎ出す。
「お前は居眠り学習ができんのな!」
「んだそれ…家で解いたことあるやつだったんだよ」
「うわっ偉いなお前」
ゲラゲラと笑いながら毎回休み時間が終わるまで琉空とくだらない話をした。隣には梨沙がいて梨沙の隣にはいつも一緒にいる女の子がいた。話の中で何度か梨沙たちも交えて盛り上がっていたが横を見ればいつもその女の子が俺の方を見ていた。正直よくわからない子だと思う。
気が付けばあっという間に授業は全部終わり帰る時間になった。借りていた本を返しに図書室に行き、また本を借りて教室に戻ると梨沙の姿がなかった。トイレかと思ったけど待っても待っても梨沙は現れなかった。
『梨沙遅い』とメールするとしばらく経ってから『ごめん、先に帰ってた( ´>ω<)人』と返事が来た。どうやら友達と遊ぶ約束をしたらしい。めっちゃ待ったのに、とか思いつつひとり家に向かって歩き出した。