「結衣、キミのために弾くよ、聴いてて」 日本人ではとても言えないセリフをさらりと言ってのけると、王子はピアノの前に座り、弾き始める。 優しい音が空間に広がる。 きれいな音の粒。 まあるくて、 透明な… ――きらきら星だ…… 繰り返される旋律、 速いパッセージ。 弾き終わると、王子は少しだけ照れくさそうに笑って、振り向いた。 その姿に、 ギュウッ…っと、 胸が締め付けられる。 こんなこと、今までなかったのに。