数日前から続いている夢の話である。


夢の世界の優奈は、勇者ライナと共に、とある宿場へと訪れていた。

そこは宿場の中でも少しランクが高い所らしく、ある程度の功績が無いと止まれないという、少し変わった宿場だった。

RPGらしく宿場と言ったが、実際はホテルに近く、聞けば10階建ての大型宿屋てある。

｢やっぱりこういう時代なので、実力者になればそれだけの対価が貰えるという事なんだ｣

勇者等の上級ランクを目指す人が多い為、職業、施設などにランク条件というのがついている。

｢そんなに勇者が必要な位、この世界は魔王が沢山いるの？まぁ、ゲームで魔王またはそれに近いのが複数居るの方が多いけど｣

｢それも含めて、俺らの部屋で説明するよ｣

ライナの部屋は、やはりと言うべきか、最上階角部屋だった。

時の魔王とやらを倒したと言う話は、集会所で把握していた優奈は、そこについては特に驚かなかった。

｢今俺と一緒に泊まっている仲間は1人だけだから、優奈も遠慮なく寛いでくれよ｣


ライナが部屋の扉を開けた。


ホテル外装から正直少し古めかしいイメージがあった。
そのせいか室内は想像よりも豪華である事に優奈は言葉を失った。

部屋が広く、高級感のある室内ということはある程度予想出来ていたが…

広々したベットが4つ、部屋数は遠目で見るだけでも3室は確実に存在していた。
ベランダ部分も広く、この辺り一面を見渡せる。

｢いや、えと…。ほら、旅人って荷物多いし、複数で行動するチームが多いから、この辺りの宿屋は大体…こんな感じで｣

唖然とする優奈にライナは恥ずかしさが生まれたのか、少し言葉をつまらせながら説明し始める。

｢……流石勇者…｣

今の優奈が出せる言葉はそれしか無かった。


｢何やら騒がしいが、誰か連れてきたのか？｣

奥の部屋の扉が開き、中から1人の青年が現れた。

滑らかで艶のある美しい黒の長髪
細目のためミステリアスな雰囲気を持っているが、穏やかで優しさが滲み出ている美しい顔立ち

ライナとはまた違うイケメンに属する青年だった。

｢……ぁあ、この子が例の子か｣

｢そうそう、異世界の子供｣

｢そうか…君が選ばれた子供か｣

長髪の青年は軽く会釈をすると、優奈に手を差し出した。

｢初めまして、私の名前はルーシー。今はライナの占い師兼賢者をやらしてもらっている｣

｢は…初めまして。優奈です…｣

恐る恐る差し出された手を握り返した。

とても温かく、力強くそして赤子のように滑らかな肌を持つ手だった。