勇者ライナに手を握られたまま、街の外れへと連れられた。

歩く事で冷静さを取り戻した優奈は、彼に声をかけた。

「あの…どこまで行くのですか?」

「ん?あ、ごめんごめん!」

ライナは気まずそうに笑うと、握っていた手を離す。

「…初めまして…だよね。さっきは突然変な設定を使ってしまい、申し訳なかった」

頭を下げるその姿はとても紳士的だった。
話し方も雰囲気も穏やかで、初対面なのに遠い昔どこかで会った事があるような錯覚に陥ってしまう程の親近感も感じた。

「貴方がここにくるのは、仲間の予知夢で知っていました。きっと苦労すると思い、探していたのですが…。直ぐに駆けつける事が出来ずに申し訳無い」

「いやいや!そんなに謝らなくて大丈夫です!それにさっきは助けてくれてありがとうございます!」

何度も謝るライナに逆に申し訳無くなった優奈は、慌てながら言葉を繋ぐ。

「ところで…これからどうするの?行く宛あるの?私…何か安心したら、おなか空いちゃった」

「ならば俺達のアジトに来てください。仲間がご飯を作って待ってるはずです」

ライナは再び優奈に向けて手を伸ばす。
手を下から差し出すその仕草は、まるで王子のようだった。

優奈ははにかみながらも、ライナのその手に手を添えた。




優奈は瞬きをした。


目が覚めるとそこは見慣れた天井で、聞き慣れた機械音が激しく鳴り響いていた。

「……朝か」

いい所で目が覚めてしまったなと、残念がりつつ、優奈は学校に行く準備を始める。

顔を洗い、髪を整える。

その時ふと、鏡の中の自分を見た。

濃いブラウンで胸まであるくせ毛の髪、日本人によくある黒い瞳を有する自分は、一般的な姿だなと思ってしまった。

(……ライナの髪と目…綺麗だったな)

太陽のように輝く髪に、透き通った蒼い瞳

現実世界にあそこまで綺麗な瞳を持つ人間等、居ないであろう。

優奈は部屋を出る前に枕の下に隠していた写真をとりだした。

それはとあるゲームの主人公のカードだ。
銀髪の長髪、紫の瞳が特徴のイケメンである。

(……夢って結構重い通りにはならないね)

ある意味対象的な容姿のライナを思い出しながら、優奈はカードを引き出しに戻した。


今日も夢の続きが見れますように

優奈はそう心の中で願いながら、朝ご飯を食べに1階へと向かった。