★★★

「という展開になりまして…」

「ふぅん……」

優奈の話に悟はあからさまに不機嫌な顔を浮かべていた。

「な、何で悟がそんなに怒る?」

「………ていっ」

「ぁあー!それずるい!絞め技ずるい!!」

格闘ゲームを始めていた2人だったが、悟の連続絞め技により優奈の敗北が決まった。

「……てかよ、優奈ってさ…好きなやつとかいるわけ?」

「え?!何?突然何?!」

「別に」

どこか不貞腐れたように尋ねる悟に対して、優奈はオドオドと挙動不審になりつつも、言葉を選びながら話し出す。

優奈は幼馴染の悟に好意を寄せていた。
しかし自分とあまりにも不釣り合いの為、その想いを伝えた事は無かった。

悟に伝える事も、自分の事をどう思っているのかを聞くことさえも怖くて出来なかった。

「い…今は特に居ないけどっ…、そ、そういう悟には居るの?」

本当は悟が好き

素直に伝えられたら、と後悔しつつも、伝えられずにいる自分に、優奈の心はモヤモヤと曇がかかる。

「秘密」

「ず、ずるい!自分だけ言わないなんてっ!」

「じゃあこのゲームで俺に勝ったら教えてやるよ」

「望むところよ!!」

ゲームの力を借りて、優奈は悟の申し出を受けた。


数時間後


「ぅう…」

「まだまだだね」

「悟が強すぎるんだよ…これでも私、クラスでは強い方なのに…」

格闘ゲームで全敗し、意気消沈している優奈に悟はクスクス笑う。

「また勝負しようぜ。勝ったら教えてやるからよ」

悟は優奈の頭に手を添え、優しく撫でた。
悟の大きく、少し骨ばった手は温かく、心地よかった。

「……ん」

撫でて貰えるのが嬉しくて、優奈は堪らず声を漏らす。
目を少し細め、仄かに顔を赤らめている事に気付いていない優奈は、静かに悟に撫でられていた。

優奈の変化に気付いていたが、悟は気付かない振りをした。

(こんなにわかり易いのに、気づかれていないと思っているのが凄いな…。いや、そこが可愛いんだけど)

「……髪」

「え?」

「相変わらず綺麗だな」

「ふぇ?!」

「変な顔」

優奈の鼻頭に指を動かし、くいっと持ち上げる。

「ちょっと!何してるの!」

「元気出るかなって」

ケラケラ笑いながら悟は優奈から手を離した。
優奈は恥ずかしそうに口元を隠し、顔を反らす。


「絶対次こそは勝ってやる」


「おう!いつでも待ってるぜ」