「これは参ったなぁ~
誠実な男に戻って出直して来ま~す。」

ヒラヒラ手を振って、職員室に入って行く樹。

残された俺は…………気まずい。

チラッと彼女の様子を見ると………

まだ何か思い詰めたような………泣きそうな表情をしていた。

……………??…………。

決して、樹にたいする罪悪感ではない。

もっと違う何かを考えているようだ。

「伊藤さん、大丈夫?」

俺の声に我に返ったのか、ハッと驚く。

「あっ…はい。………すみませんでした。
木村先生にも悪いことしちゃった……………。」と落ち込んでる。

「大丈夫ですよ。樹はいつものことだから。
教師にあるまじき会話をした、アイツが悪いんですから。
伊藤さんは気にしなくても、良いですよ。」

俺のフォローにあまり納得しないまま

「では、教室に戻ります。」と…………一礼して去って行った。




職員室に戻ると………

「あれが原因??」と

先程、自分が言われた『浮気』のことを聞いてきた。

「う~ん。どうだろう?
でも、その可能性は大きいと思う。
あんなに真剣にって……
当事者かその人にかなり近い人物でなければ……ありえないだろう?」

俺の質問に、樹も

「だよなぁ~。
もしかして、元カレに浮気された?」

彼氏がいたかどうかは分からないが……

この間聞いた『彼氏と同じ所に行きたい?』の質問を

はぐらかしたのが……カギなのかも。

謎が多い彼女のことが………気になって仕方がない。