冷たい指切り  ~窓越しの思い~

コンコン

「失礼します。」

部活終わりの彼女に、メールをした。

「カルピスがあるよ。」と。

「はい、お疲れさん。」

定位置になりつつある、二人掛けのソファー。

ちょこんと座って、美味しそうに喉を潤している。

「今日は、大変でしたね。今、工事中ですか?」

大変だったと語る彼女だが、涼しい顔でミーティングをこなしていた。

「伊藤さんって………汗をかかないの?
よくあんな部屋で、授業を受けてたね。俺には無理だぁ。」

「汗はかきますよ。
でも、女の子って……男の人より暑さに平気なのかも。
昔、クーラーが『低すぎる』『暑い』って……両親がケンカしてましたから。」

おやっ!

家族の話しを、自分からしてる。

思い出話が出来る事に驚いた。

俺の表情に何かを感じたのか

「これでも、昔は……仲良し家族だったんですよ。
今は、懐かしい思い出だけど。
先生には、自然に昔の話しが出来ちゃった。」と………

「話したくなったら、いつでもここにおいで。」

別に思い出も過去も、全てを否定したいんじゃないのだろう。

今が許せないだけで………。

俺も同じだ。

この間香里ねぇに会って………

離れていた4年がウソのように………過去の時間が思い出された。

辛いこと悲しいこと………淋しかったことが、沢山あったはずなのに………

思い出すのは

香里ねぇの卵焼きや樹と花火をしたこと。

…………後は………たまに仕事に行く前に握ってくれた……塩むすび。

ちょっとしょっぱいそのオニギリは……三角なのか丸なのか

分からない形だった。

伊藤さんには、同情………もしくは同じ境遇の仲間意識。

クラス担任としては……良くないと分かっている。

それでも………もう少し、彼女が本来の笑顔を見せるまで………

側で支えたいと思っている。