「そうそう!その伊藤さんが……クラスで倒れたらしくて
樹先生が保健室に運びました。
今は、保健室で寝てると思いますよ。」

「えっ!伊藤さんが!!!」

どうしてそれを先に言わない!

イラつきながら望月さんを置き去りにして、保健室に急いだ。

コンコン。

返事を待たずにドアを開けると……

「失礼します。」と言いながら入室する。

「石井先生!
ここは、女の子ばかりの学園ですよ!
着替えやスカートを上げて治療している子もいるんですから……
もう少し、気を配って下さい。」

保健室の田中先生に、注意を受ける。

あっ!そうだった。

普段は、女子校だからと特に気を付けているのだが…………。

「あの…………それで……伊藤さんは……………?」

「あっ、先生のクラスでしたか?
彼女なら、寝不足による貧血でした。
テスト前なので……無茶をしたのでしょう。
朝も抜いてたみたいなので……今、木村先生に口に出来るものを
買いに行ってもらいました。
先生からも、注意して下さいね。
朝ごはんをきちんと食べて来ることと
テストだから仕方ないことだけど………
睡眠をとらないと頭の働きが悪くなって、かえって良くない結果になるってことを…。」

「はい。」

返事をしたものの

俺の頭の中は『姉ちゃんがいながら、どうして朝食を食べて無いのか?』不思議だった。

もしかして………………『姉ちゃんの身に、何かあった??』

不思議に思いながら、カーテン越しに声をかける。

「伊藤さん、大丈夫ですか?
開けても良いですか?」

「…………………はい。」

覇気のない声が聞こえ、ソッとカーテンを開けると

まだ青白い顔の彼女が、口元まで布団を掛けてこちらを見ていた。

「寝不足と聞きましたが、大丈夫ですか?
倒れたみたいですけど……頭は打たなかったですか??」

「はい、すみません。もう大丈夫です。」と起き上がろうとする。

「いえいえ。今、樹が…………あっ木村先生が……
口に出来るものを買いに行ってるから、それまで休んでいて下さい。」

こんな時まで気を使わないで、ゆっくり休んで欲しい。

「帰りましたぁ~」

馬鹿に明るい声が聞こえ、田中先生に注意を受けている。

お前はもう少し気を使え!!

「ちぃちゃんどう??
経口補水液とゼリーとプリンと焼き肉弁当を買ってきたよ!
どれがいい?」

どれがって……プリンまでは良いとして、ナゼ焼き肉弁当??

それは、お前の??

「焼き肉って、元気出るよね?食べる?」

いやいや………それは無理だろう。

顔だってまだ青白いんだぞ。

「だったら……経口補水液を頂いても良いですか?」って。

まぁ、当たり前だよ。むしろ、これを買ってきた奇跡に拍手だ。

後ろを支えて起き上がらせ、経口補水液を持たせる。

「体に染み込ませるように、ゆっくり飲んで下さいね。」

時間をかけて飲むのを確認してから、田中先生のところに向かう。