運動会も終わり、生徒にはまたまた嫌な期末試験。

教師もそれは同じで………

テスト作りと採点、補習まである。

おまけに今回は、成績表と進路指導も行わないといけない。

夏休み前に1度進路について話し合い、夏の過ごし方の参考にする。

全く考えていない生徒も、今回の成績表と夏休みで

自分の進路について考えるはずだ。

…………伊藤さんは………どうするつもりだろう?

今の成績なら、ある程度自分の行きたい大学は選べる。

ただ彼女の場合、将来を考えてではなく……

家族から離れたいだけというところに問題がある。

ご両親と話してみるという案もあるが…………

頭ごなしに反対されては、彼女を傷つけるだけだ。

それに、家を出たい理由が『ご両親の浮気』だと…………

進路相談で出来る話題ではないから……三者面談にもならない。

先ずは、伊藤さんと十分に話して………自分の将来は自分の為に使って欲しいと言おう。

家族やご両親から逃げるために将来を決めてしまうと

絶対に、いつか後悔する時がくると思う。

これ以上、傷をつけたくない。

「先生。」

「先生~。」

「石井先生!」

ハッとして振り向くと、先日の運動会で樹の担当だった望月遥がいた。

「あぁ~、こんにちは。」

「先生、大丈夫ですか?
ずっと呼んでたのに気づかないから、びっくりしちゃいました。
悩みだったら、樹先生に話してみたらどうですか?」

「樹に??ナイナイ。
幼稚園児に頼んでも、樹には相談しないよ。」

笑って答える俺に

「でも、恋の悩みだったら……樹先生の方が先輩だから
良いアドバイスが貰えますよ。」と…………

樹が先輩??

驚く俺に

「石井先生のお相手って、伊藤さんでしょう?」とさらに驚く内容を!

「はぁ!?伊藤さん!!!」

ここが廊下だということも忘れて、叫んでしまう。

「えっ、あっ……えっ!!」

驚きのあまり、言葉が出てこない。

どんな誤解をしたら伊藤さんと俺の組合せが出来るんだ??