「伊藤 千尋。」

「はい。好きな人は、石井和也先生です。
これから楽しくなりそうで、ワクワクしてます。」

「やだ~。ちぃ~」

「もぅ、ちぃは~」

先程までのおとなしさは消え、女子高生らしい賑わいが広がる。

どうやら、この伊藤千尋という子が………このクラスの色を作っていくようだ。

「伊藤、それはありがとう。私も楽しくなりそうです。」と笑顔で返した。

彼女は去年、担当していなかったからよくわからないが……

この学校には珍しく、自分らしさをもっているように感じた。

その後も自己紹介は続き、最後の子を終えたところで

「では、クラス委員の選出をしようと思います。
自薦、他薦を問わないので……」

「あっ!だったら、立候補します。」と手を上げたのは

先程の伊藤千尋。

やはり、この子かと……クラスのリーダー的存在に安堵した。

クラスに一人、積極的な子がいてくれたら教師は助かる。

「他にはないですか?」

俺の質問に

「ちぃなら、安心だよね。」

「ちぃより適任者って、いないし。」

「千尋のクラスで、良かったぁ!」と大絶賛。

これ程目立つ子を、気づかないで1年過ごした自分に驚く。

たとえ担当していなくても、噂くらいは耳にしてそうなのに………。

「だったら、伊藤さん。お願いします。
早速ですが……クラス名簿を作ろうと思うので……
放課後、お願いできますか?」

俺の問いかけに、笑顔で答える。

「では、ショートホームルームを終わります。
伊藤さん、後で数学準備室までお願いします。」