コイツが現れた原因は一週間前まで遡る。
私の祖母が死んだ。
家で、寿命で、ぽっくり逝った。
祖母は、事件に巻き込まれ死んでしまった両親の代わりに私を引き取って育ててくれた。
本当に優しく、向日葵という言葉が良く似合う温かい人だった。
しかし、死んでしまった。
本当に突然のことすぎて、涙の一粒さえ出やしなかった。
棺桶に入った祖母の顔が、あまりにも眠っているようにしか見えないから、少し待っていれば起きるんじゃないかと思ってしまった。
親戚の人は「頑張るんだよ」とか「女の子の一人暮らしは危ないから気をつけるんだよ」とか励ましの言葉をたくさんのかけてくれたが、引き取り手を買って出る人は一人もいなかった。私は知っている。
老婆の様な白髪。深海のような青い瞳。
私のこの容姿を気味悪がっているのだ。裏で「気持ち悪い」、「呪われた子だ」と言われているのも知ってる。ましてや「両親が死んだのはあの子のせいだ」と言われる始末である。
幸い資産家だった祖父のおかげで、大学を出れるくらいのお金はあったので、私はそのまま祖母の家で一人暮らしをすることに決めた。
両親もいない。
祖母もいない。
自分の身を案じてくれる人は誰一人としていない。
私は完全に一人ぼっちになってしまった。
一応料理はできるけど、祖母が作ってくれたもののような温かさはないし、味も無い。
家から帰ってきた時の「ただいま」「おかえり」の掛け合いもない。
いつも二人で寝ていた布団に温もりはなく、寒すぎて凍え死ぬかと思った。
私はこの時初めて知った。

「全部おばあちゃんが温めてくれてたんだ」

と。
当たり前だと思っていたこと全部が、私の心を、体をこんなにも温かくしてくれていたんだと。
だから私は願った。普段信じもしない神に願ってしまった。

「もう独りになりたくない」

と。
人の温もりを知ってしまっていた私には、耐えられなかったのだ。独りの寒さに。
だからそう確かに願ってしまった。

そして、

ボンッ!!