「晴香」
まっすぐに名を呼ばれた。
ドキンっと跳び跳ねたわたしの心臓。
「な...なに?」
とても真剣な瞳でわたしを見つめてくるもんだから、思わずうろたえてしまう。
その綺麗な形の唇がゆっくりと小さく開かれたーー
「...俺、お前に話したいことがある」
「...え?」
話したい...こと?
もしかして、そのために今日わたしをここに呼んだの?
わたしは彼の次の言葉を待った。
なにを言われるかはまったく検討がつかなかった。
だって、わたしたちは別のクラスであり、今月から補習を一緒に受けるというきっかけで関わり始めたばかりで、
まだ2週間しか経っていなくなにも深い仲ではないからだ。
わたしに悩みを相談するとも思えない。
それとも、本性を知ったわたしだからこそ、言えることでもあるのであろうかーー
「俺、ーー」
ーーぐうううう...
そのとき、洸の言葉を遮るように、この広い空間全体に聞こえる不恰好な音が鳴り響いた。
い、今のって...。
「...」
「...プッ」
「ッちょっと!!笑わないで!!」
クックとこらえきれないように肩を震わせる洸。
ああ、穴があったら入りたいとはこのことだ。



