「まあ...たしかに私も今まで見てきた中でその人が一番王子っぽいわね」


たった今わたしたちの会話に出てきた人物。


それは、隣のクラスの“彼”のこと。


ーーガヤガヤ

なんだか廊下に人がいっぱい流れてきたと思ったら、どうやら隣のクラスが移動教室のようだ。


わたしはすかさず廊下を盗み見た。


その2秒頃ーー現れた“彼”。


その周りだけが、空気がちがうように見える。


きっと彼が放つオーラだ。


「...今日もかっこいい」

思わず言葉が漏れてしまう。

うっとりしてしまっている自分にも自覚してる。


「...まあ、それは認める」


紗由理は口ではそう言うけど、けっしてわたしみたいに目をハートにさせるわけではない。

きっとタイプではないのであろう。