「ななななにを...」


わかっていたけど、知らないフリをした。


だって、なんだかものすごくキケンな香りがしたから。


「...男ってやつを、な?」


「...い、意味わかんない...」


「こんな勉強だけじゃ、つまんねえだろ?」


今でさえドキドキしてるのに、スルリと指を絡ませられて、ドキドキがもっと強くなる。


こんな偽物王子にドキドキなんてしたくないのに、この人のペースに飲み込まれてしまいそう。


現実には小説のなかの王子様なんていないのはもう痛いくらいに分かってる。


だけど、こんな俺様野郎にほんろうされてしまうのだけは、ごめんだーー


「か、か、からかわないで!

これ以上変なこと言ったら、みんなにばらすから!」


わたしは洸の手をふりほどいて、持っていたシャーペンの先をピン!と彼に向けた。