わたしの描いていた王子様が!!

まさかこんな偽物だったなんて!!

ありえないっ!!


「さっきまでハートにしてた目が、すごいことになってんな?おー怖っ」


わざとらしく言われ、わたしはさらに睨みをきかせた。


「ハートになんてしてないっ!」


わたしの好意に気づいていたんだ。


そりゃあバレバレだったのかもしれないけど。


先生が来るまで、騙されているわたしを心のなかで笑ってたんだ...!!


彼はわたしのにらみなんて少しも気にしていないようで、

机の横にかけたわたしの少し開かれたカバンから教科書をひとつ取ってきた。


「ちょ、なに...っ」


「...晴香、な」


「っ!!」


教科書の裏にサインペンでつづられた文字を見て、

遠慮なく奏でられたわたしの下の名前。


わたしの心臓がどきんっと高鳴ったのは、

あまりに不意討ちすぎたからだ。


たったそれだけのことだ。