「...洸...昨日...は、あんなこと言って...」


ごめん。そう言いたかった。


“カナダにでもどこにでも行っちゃえ”

あの言葉を謝りたかったのに。

洸はそれを言わせてくれなかった。


わたしの存在を確かめるみたいに抱き締めなおして、

ぎゅうっと自分の胸にまた閉じ込めた。


心臓がわしづかみされたのかと思った。


「......わるいのは俺だ。どうせ俺のほうが忘れられないのに...あんなこと言ってごめんな」


頭上で紡がれる言葉。


頭のなかでもう一度並べて、自分でもわかるように噛み砕く。


だって、そうしないと...わたし、自分の都合のいいようにとらえちゃうよ...。


それから洸はわたしを抱き締める力を緩めて、ひとつひとつ話をしてくれた。


自分がこれまでダメ人間だったこと。


双子の姉の紲さんのこと。


わたしが事故に遭ったとき、すぐそばにいたこと。