俺は自分の目がおかしいのかと思った。


だって、正門に着く直前で、目の前から、晴香が飛び出してきたから。


別人かと思ったが、見間違えるわけがない。


晴香だ。


晴香はそのまま横断歩道を飛び出してーー


「晴香ッ!」


俺は晴香の肩に腕をまわし、後ろへとグッと引っ張った。


晴香は体勢がくずれて、引きずったような形になった。


「前見ろ、バカ...」


心臓が.........止まるかと思った。


たしかに車は来ていなかった。


だが、猛スピードでバイクが走って来ていたのだ。


どうした、忘れ物でもしたのか?


いや、今日は持ってくるものなんてないはず。


俺が来る前に、そんなに急いで帰りたかったのか?


昨日晴香を傷つけてしまったから、そんなマイナス思考になってしまう。


帰られて、たまるかよ。


そんなことさせない。


晴香の腕をつかんで、そのまま引っ張って歩いた。


俺たちがこれまでふたりきりで過ごしてきた教室。


この1ヶ月で、積もりに積もったこの気持ち。


...もう、絶対離さない。

離してやらない。


あふれる愛しさのあまり、

その小さな体をぎゅっと自分の胸に閉じ込めた。