“彼女”より、俺のほうが、あの男の子に近かったんだ。 一歩踏み出して、腕を伸ばせば、きっと助けられた。 それができていれば... “彼女”は無傷で済んだのに...。 足も手も動かなかった。 声さえ出なかった。 俺はなんて......無力なんだ。 そして、あの“彼女”はーーなんて勇気ある子なんだ。 この高校に首席で入学し、 優等生として振る舞う俺なんかより... よっぽどできた人間だ。 “真瀬晴香” それが彼女の名前。 次の日の学校で、俺はそれを知った。 隣のクラスの女子だった。