俺はその日から、自分の行動をすべて改め直した。
とりあえずまず、勉強しなくてはならない。
紲は、県内で一番偏差値の高い高校を受験するはずだった。
でも、俺はそこを目指したくなかった。
なぜならその高校はこの町にあるからだ。
俺はこの町...いや、この県から出たかった。
俺のことを誰も知らない場所へ行って、1からやり直したいと思った。
だから俺は隣の県の一番偏差値の高い高校を目指した。
とにかく勉強した。
学校にいようと家にいようと常に机に向かった。
紲が中学受験で勉強を教えてくれていた日々を思い出した。
涙が止まらなくなった。
泣きながら勉強した。
紲は“睡眠も大事だからね!”と言っていた。
だから俺は夜6時間は寝た。
残りの18時間は勉強した。
冬休みに入る前の模試で、俺はB判定を取った。
そこで初めて親に宣言した。
この高校に行きたいと。残りの2ヶ月で必ず合格ラインであるA判定を目指すと。
紲が助けてくれたこの命で、精一杯上を目指して生きて父さんと母さんを安心させると。
今は信じてもらえないかもしれないが、どうか応援してほしいと。
母さんは俺が必死に勉強をしていたことを知っていたようで、泣きながら「洸がそんなこと言ってくれるなんてうれしいよ...がんばってね」と言ってくれた。
父さんは「合格できたら考える」とだけ言っていた。
俺はさらにやる気で満ちあふれた。
あんなに大嫌いだった勉強を、少しずつ好きになりはじめた。
自分が自分でないみたいだった。
自分の中の何かがうごめいてるようだった。
その感覚はとても気持ちがよかった。



