っえ......?
宙に舞う紲を見て......
俺は現実なのか理解するのに時間がかかった。
震える足で道路に叩きつけられた紲のもとへと駆け寄る。
紲の着ている白い浴衣が...赤く赤く赤く染まっている......。
救急車...!救急車呼ばないと...!!
真っ白になった思考で必死にそう思うも、手の震えが止まらず...ケータイを持つのでさえやっとになってしまう。
後ろから大型トラックからおりた男がやってきて、顔を真っ青にしながら119番に電話をかけ始めたので、俺は紲のそばにしゃがみこんだ。
「ッ紲...!紲...っ!」
待ってくれ。うそだろ、紲。
こんなこと...ありえない...。
「う......」
紲の目がうっすらと開かれたけど...焦点が合っていない。
でも、俺を見ようとしていることは、わかる。
「紲、なんで俺なんか...ッ!!」
俺なんか助けるんだよ...!!
涙のせいで視界がひどく歪んで紲の顔が見えなくなる。
手の甲で雫をぬぐって、紲の頬を包み込んだ。
あたたかい。
紲は生きてる。
あたたかい体を抱き締める。
生きてる生きてる生きてる。
「紲、しっかりしてくれ...!もうすぐ救急車が来る!たのむ...たのむから......っ」
たのむから...逝かないでくれ...。
「......洸が......ぶじで......よかっ...た......」
紲の最後の言葉はこれだった。
「紲...?紲!紲...!!」
俺の言葉はもうーー届かなくなっていた。
紲は俺をかばって...居眠り運転の大型トラックにはねられ...
俺の腕の中で、帰らぬ人となった......。



