小学生まではおままごとみたいな恋愛をいくつかしてきたが、

中学に入り、俺は本格的にモテはじめた。


毎日毎日ちがう女が声をかけてくる。


俺は暇つぶしにその女たちと遊んだ。


勉強も部活もしなく、だらしない男のはずなのに、女たちにとってはそんなのどうでもいいようだった。


自分はそこまで魅力的な容姿をしているのかと自負してしまうくらいだった。


「洸、今日も女の子と遊んでたのー!?」


中学生にしては夜遅く家に帰ると、呆れ顔の紲がそこには立っていた。


「まったくもう、一人にしぼりなよー!!」


「そんな本気になれるやつなんていねえよ」


紲には言ってやらないが、いちばん近くに“紲”がいるせいで俺はまったく他の女が魅力的に感じなかった。


“完璧”がこんなにすぐそばにいたら、どうしても他はすべて劣って見える。


こんな俺が紲より上の女を望んでいるわけはなかったが、

俺は中学三年間で自分から言い寄ったことも“本気”になったことも一度もなかった。