自分もやればできるだなんてーー馬鹿だった。
俺の実力じゃなかったんだ。
父さんが...根回ししていたんだ。
俺はこれから少しずつ頑張ろうと思っていた。
だが、その瞬間、そんな気持ちが木っ端微塵になった。
俺なんて...。
俺が......紲みたいになれるわけ、ないのに。
完璧な紲に少し近づいた気がしていたのは、
それはそれは短い時間のことだった。
なにもする気が起きなかった。
俺がどうあがいたところで、紲には届かないし、
両親は紲しか求めていない。
俺は...いらない存在なんだ。
バスケ部に入ろうと思っていたが、それもやめた。
県内で一番偏差値の高い中学校に親の七光りで入学した俺は、
あっという間に底へと突き落とされた。



