「だー!くそ!わかんねえ」
「大丈夫大丈夫!まだ試験まで半年あるんだから!!受験は夏からが本番っていうじゃん!!」
「おー...」
自慢にならないしまったく威張ることではないし、今考えたらほんとうに恥ずかしいが、俺は生まれてことかた一度も勉強をしたことがない。
だから基礎の“キ”もわからなかった。
そんな俺を紲は毎日根気よく当の本人である俺よりも熱心に教えてくれた。
「紲は自分の勉強をしなきゃいけないだろ」と言ったこともあったけど、紲は「教えてると自分も覚えるの!」なんて器用なことを言っていた。
俺には到底できないことだと思った。
入試まで残り1ヶ月。
人生で一番勉強したといっていい俺は、なんとE判定だった模試を、B判定までに上り詰めた。
「洸、すっごいじゃん!!これなら合格できるよ!!」
「いや、でもこれCよりのBだぞ」
「大丈夫大丈夫!あと1ヶ月あるんだから!ラストスパートがんばろっ!!」
常にA中のA判定だった紲は、最後の1ヶ月も俺のために時間を使ってくれた。
俺はそこまでしてくれる紲のために絶対合格したいと思った。



