俺は昔から勉強が嫌いで、親にも反発してばかりで“自慢の息子”とはほど遠かった。


俺の親は会社を経営していて、ふつうなら長男である俺を社長として後を継がせるだろう。


でも俺は、将来が決まっているなんて受け入れられなかった。


どうして親の言いなりにならないといけないんだ?


俺は俺の好きなことをさせてくれ。


そんな調子で俺はずっと過ごしてきた。


もし俺が一人息子なら、どこかしらで望月家の人間としての自覚が芽生えたかもしれない。


でもそれは小さな芽さえ地上に出ず、種のままだった。


もしかしたら、諦めた親がその種さえ掘り起こしたかもしれない。


そして、もう一人の子供に種を植え水をやり、大きく大きく成長できるように育てた。


もう一人の子供。

俺は一人息子じゃなく、姉がいる。


名前は紲(せつ)。


双子の姉だ。