洸は驚きのあまり言葉を出せずにいるわたしの腕をその震えていたはずの手でしっかりとつかむと、

そのまま引っ張って正門をくぐり抜け学校のなかへと入っていった。


「洸...職員室はあっち...」


やっと発することができたわたしの声なんて無視して、

職員室がある校舎も、真ん中の校舎も通りすぎて...

わたしたちの教室がある校舎へと足を踏み入れた。


わたしはただ、引っ張られるままに...。


洸がなにを考えているのかわからない。


でも、カナダに行ってしまう前に、こうして洸にちゃんと会うことができた。


それだけでうれしくて涙が出そうになる。


洸は、わたしたちがこの1ヶ月ふたりきりでいた教室の扉を開けて...



まるでわたしを引きずり込むように自分の方へと引っ張って。


ピシリッと勢いよく扉が閉まったと思ったら...。


気づいたときには、


洸の腕の中にいた。