ローファーだけでなく、この制服に袖を通したのも、このカバンを持つのだって1ヶ月ぶりだ。


...なぜならわたしは、昨日まで病院のベッドの上にいたから。


1ヶ月前、黒いランドセルを背負い、黄色い帽子をかぶった小学生の男の子をかばってーー

わたしは軽自動車にひかれた。


意識不明の重傷を負った。


“ッ危ない!!”

とっさに出た言葉と自分の体。


まさか、他人をかばって車にひかれることがわたしの人生に刻まれるなんて、想像もしていなかった。


だが、お母さんのいうとおり後遺症等はなく、完全に治ったことがなによりだ。


男の子と、その子の両親共々何度もお見舞いに来てくれて、何度もお礼を受けた。


わたしは少しだけ自分が誇らしく感じた。