「...やっぱりマロンみてぇ」
意識が飛びそうになるころ、後ろからそんな呟きが耳に届いた。
マロンって...この家のワンちゃんだよね。
たしかに犬顔って言われるし、髪の毛もマロンちゃんと同じような色だけど...マロンちゃんに似てるって、それってどうなの!?ほめてるの!?喜んでいいの!?あんまりうれしくないよ!?
いい意味で言ってるの?わるい意味で言ってるの?
そんなことは聞けなかった。
彼の手のひらはとても優しかった。
初めて彼の優しさに触れた。
今まで彼にされた意地悪な出来事なんて、忘れてしまうくらい...ときめいてしまった。
彼のことをなんて、もう好きじゃないはずなのに。
それに彼には彼女だっているのに。
ねえ、藍川くん。
これ以上わたしの心を、
かきみださないで?



