いじわるな藍川くんの愛が足りない



「犬、好きか?」


マロンに向けていた瞳をわたしにさっと向けられ、どきっと心臓がちいさくはねた。


彼の家に来たこと事態、きっと、どきどきしてる。


「わ、わたしもポメラニアン買ってるから...」


「へえ。今度見せてくれよ」


いいよ、とは言えなかった。


だってわたしたち...そんな仲じゃないでしょう?


キャンッキャンッ


藍川くんにすごいなついてる。


そして彼も、きっと愛犬であるマロンのことが好きなんだろな。


だって...ものすごく優しい眼差しで、マロンを見つめて体を撫でているから...。


「...わたしにもそれくらい、優しくしてよ......」


自分でも無意識だった。


だから言った内容も自分で理解するのに時間がかかった。


わたし今...なんて言っちゃった?


気づいたときには顔から火が出そうなほど恥ずかしくて、貧血もあり思わず倒れそうになった。


いや、むしろ倒れたかった。


記憶をなくしたかった。


彼と目だけは合わせたくなくて、うつむいた。


そして背を向けた。


彼から一歩遠ざかった次の瞬間、わたしの体は宙にふわりと浮いた。