彼の名前は藍川司(あいかわつかさ)というらしい。
1ヶ月前まで、知りたくて仕方なかった名前。
今さら知ったって、どうだっていいのに。
ーーああ、神様。
こんなことってありますか?あっていいんですか?なんの罰ですか?わたし、そんなにわるいことしましたか?
わたしは放課後になるまで、一度も後ろを見なかった。
振り向けるわけなかった。
近くの友達に“藍川くんと友達なんだね”って言われたけど笑ってごまかすことしかできなかった。
舞には、トイレで藍川くん=藍色の彼であることを告げた。
舞は心底驚いていた。でも、彼が朝“駅のホームでいろいろありまして”と言っていたから、もしかしてとは思っていたらしい。
藍色の彼...いや、藍川くん、どうしてわざわざあんなことを。言わなくてよかったじゃないか。
しかも...めちゃくちゃ、愛想よく。
きっと、先生もクラスメイトも、藍川くんがめちゃくちゃ優等生に見えたはずだ。
休み時間に藍川くんのまわりにクラスメイトがたかっていて、彼らの質問にも、彼は笑顔で答えていた。
わたしに向けられた声色と態度とはーーまるで真逆。
あのとき、あんなにも低い声で、あんなにも迷惑そうな顔つきをしていたことをーーわたしだけが、知っている。
藍川くんが好きだったとかそんなことよりも、
態度がちがいすぎて、わたしはそれがものすごく気になってしまったのだった。



