いじわるな藍川くんの愛が足りない



バタバターーと廊下を走ってしまっては、きっと怒られる。


だからなるべく音を立てないようにしつつ、早歩きで自分の教室まで急いだ。


よかった、まだホームルームの時間だ。


終業式の日のときみたいに、式に遅れなくてよかった。


そのことにとりあえず息をついた。


“寝坊しました。遅れてすみません。”


当たり前だけど、うちの担任は遅刻の理由を言って、謝らないと、余計に怒る。


だからその言葉を心のなかで練習した。


寝坊しました、遅れてすみません。......よし、完璧だ。


今まで遅刻したことなんて一度もなかったのに、これで2回目の遅刻となった。


“遅刻”って印象がクラスメイトや先生についたら、嫌だなぁ。


明日からは絶対絶対遅刻しないっ!


そう心に決め、目の前の扉をゆっくりと開けたーー

「寝坊しましーー」

わたしの言葉は止まった。


というか、声が出なかった。


喉の奥に何かがつまったみたいに。


だってーー


「な、なんで......」


ーー藍色の彼が、そこには立っていたからーー。