いじわるな藍川くんの愛が足りない



我ながら馬鹿だと思う。


いきなり告白なんて。


だけど、頭で考えるより先に口をついて出た言葉。


間違いなくわたしの本心で、もう言ってしまったことは仕方ないという結論に達してしまった。


「え、と、その...っ

わたし、一宮(いちのみや)高校1年の、間宮詩織といいます...!

いつも同じ電車で、かっこいいなって思ってて...!

一目惚れしました...!」


わたしはきっと人生で一番、勇気を振り絞ったと思う。


そういえばわたしは、昔から土壇場ではがんばるタイプだった。


きっかけさえあれば、ちゃんと思ったことが言える自分に感謝した。


よかった、言えた...。


相変わらず心臓はドキドキうるさいし、顔は熱いし、彼の目は見れない。


彼はいったい、どんな顔、してるだろうーー


「...同じ電車?」


彼がはじめて口を開いたと思ったら、その声はかなり低いものだった。


表情もーー良いように取ればまだ真顔、

悪いように取れば、怪訝そうに見えてーー


「えっと、はい。さっきまでの電車...」


「いや、そんなの俺、知らないし。

あんたのこと、はじめて見た」


「...え...」


予想外の返答に、頭が一瞬戸惑う。


でも、当たり前か。

彼はいつも寝ていたから、わたしのことなんて見えていないはずだ。


3ヶ月毎日15分間同じ空間にいたから、自然と覚えられていると思っていた自分はなんて自意識過剰なんだろう。


「あのさ、俺、一目惚れって告ってくるやつ、一番嫌いなんだよね」


怪訝、なんてもんじゃない。


迷惑そうな顔つきで、毒を吐く彼に...


わたしは目が点になる。


なにか、なにか言わないと。


「と、と、友達から......っ」


「無理。俺、彼女いるし。じゃ」


そのときちょうどやってきた乗り換えの電車に彼は乗っていって、風のように電車と共に去っていった......。


チーーーーン。


わたしの中で何かが鳴り響いた。


わたしはその場でしばらく硬直してしまったのだった。