いじわるな藍川くんの愛が足りない



彼は乗り換えの電車が来る場所に向かっている。


その背の高い背中までかけてゆく。


追いかけて、どうする?


これまで3ヶ月間、一度も勇気が出なかったわたしに、なにができる?


そんなことが頭の片隅にあった気がするけれど、

とにかく彼の背中に追い付きたかった。


わたしが後ろから彼の腕をつかんだのと、彼がなんとなく後ろを振り返ったのは、ほぼ同時だった。


ホームには風と人が通り抜ける。


だけど、わたしの目には他の人なんて写っていなくて、今目の前にいる彼のことしかーー見えなくなっていた。


「っす、好きです...!」


自分の口から思わず飛び出た言葉。


次の瞬間、頬がカアーッと紅潮してくるのがわかって、あっという間に熱を持った。


慌てて彼から腕を離し、あたふたしてしまう。


彼の目は、決して見れなかった。