「申し訳ありませんでした」


彼は病室に入るなり頭を深々と下げてお詫びをした。


「頭を上げてください」


香澄が言っても頭を下げたまま動かない。

仕方がないので


「頭上げてくれないなら、私がそっちに行きますから」


と、ベッドから起き上がるふりをした。


「ちょ、駄目ですよ!」


慌てたように香澄の元へと駆け付けてきた。


「冗談です。
やっと会えましたね。
香澄です、はじめまして」


香澄がにこやかに挨拶をすると


「俺は、健司といいます。
この度は本当に申し訳ありませんでした。」


と再び頭を下げた。

香澄は健司に好感を持った。

誠実な人。

そんな印象を持った。


「やめてください。
頭上げてください。
こちらこそ、両親がすみませんでした…
辛い思いしましたよね」


香澄の言葉に、頭を下げたまま健司は首を振っていた。


「あの、また来て下さいね。
暇なんです、病院。
話相手になってもらえたら嬉しいんですが…」


香澄の言葉に健司は頷いていた。