家の近くで降ろしてもらい、少しだけ歩く

するとドアの前でシラユキが座り込んでいた


「ちょっと!こんなところにいたら濡れるわよ!!どうしたの…」


「バニラのこと待ってたんだ。言いたいことがあって」


「言いたいこと…?」


「うん。おかえり」


そういってシラユキは私の手をとる


涙が出そうになった

おかえりなんて、いつから聞いていないんだろう


それよりもその言葉を言うためにここで待っていてくれたことを考えると、嬉しくて仕方なかった


「ほら、バニラ。ただいまって言うんでしょ」


ふとシラユキの膝の上にある本に目がいった


“基本の挨拶”


まさかこの本を読んで…

今度は笑いが込み上げてきた


「ふふっ、うぅっ…。ただいま…」


そして、涙も





ねぇシラユキ

私きっとこの時に決めたのよ

あなたが月の民であろうと、あなたが水の紋章の持ち主だろうと、私はシラユキという一人の人間を守ると決めたの

この選択があなたを苦しめることになるなんて思ってもいなかった

無知で馬鹿なこの頃の私