青々とした葉の茂る並木道を駆け抜ける。


だんだん息が上がってきて、走るのが苦しくなっていく。


しばらく走って、町内のお知らせ板とその隣に並ぶ赤いポストの前が見えてきたところで立ち止まった。


ポストの隣にはよく見知った人物が呑気そうに立っている。


走って上がった息を深呼吸で落ち着かせて、またその人のところまで小走りで駆けつけた。




「おはよっ」




葉と葉の間から溢れる木洩れ日の下に立っている彼はこっちを振り向くと、ふわりと柔らかく笑った。




「おはよ」




風がふわりと吹いて彼の髪も緩やかに動く。


それがあんまりにも綺麗で走っていた時とはまた別の意味で心臓がドキドキする。




「ユキちゃんと会うの、久しぶりだね」

「夏休みだったからね」




彼は私、鈴原 杏奈の幼馴染。


私はユキちゃんと呼んでいるけど、フルネームは篠原 祐樹で小さい頃からのご近所さんでもある。


そして何より私の初恋の人で、私は今もユキちゃんのことが好きだ。