社長はシングルファーザー

そのあと、私と圭斗君は会話を楽しんだ。

社長は少し複雑そうな顔をしていたが、私と圭斗君が笑ってるのを見て少し、ホッとしているように見えた。

だいぶ、長居して、私たちはお店を出た。

「圭斗君、何したい?」と私が聞けば、

「今からですか?」と返ってきた。

「そう!したいことある?」と私が再度聞けば、

「特に無いです」と笑って返された。

「無いの?残念ねぇ。社長はありませんか?」と私が言うと、

「わがまま言うと、仕事以外では名前で呼んでくれ。これからは交流も深めていかないといけないと思うから」と社長に言われて、私はわかりましたと頷いた。

「サーフィンしますか?」と私が言うと、

「俺は、無理です」と社長に言われてしまう。

「…父さんさ、何でそんなに拒否するの?」と圭斗君が言うと、

「いやぁ、俺ちょっと苦手なんだよね」と社長は苦笑い。

「強要する気はありませんよ。サーフィン難しいですしね」と私は笑った。

「…けど…父さん元水泳部だし、泳げるよね?水怖いわけじゃないし」と圭斗君が言う。

「…えっ?!しゃちょ、あっ、いえ、敦之さん水泳部だったんですか?」と私は驚いてしまう。

「泳げるのと、サーフィンはまた別物でしょ?」と社長は笑った。

確かに…

「あのさ、俺、獅童さんと二人で話したい。ダメかな?」と社長に言われて、私は「いいですよ」と言うと、

「じゃあ、俺、久しぶりにお兄ちゃんとこ行ってくるから!またね!飛鳥さん」そう圭斗君は言うと去ろうとした。

圭斗君なりの気遣い??

お兄ちゃんって誰?

私のそんな 顔を読みといたのか、笑いながら、

去り際に、「お父さんの友人だから!」と圭斗君は言った。

私はそれに思わず笑ってしまった。

お父さんの友人はお兄ちゃん??

なんか面白いなぁ…なんて。

「昔から、アイツ(カズト)のことそう呼んでるんだよな」と社長は言う。

「そうなのね。なんか不思議だけど、良いわね」と私は微笑んだ。

圭斗君は今度は本当に去っていった。

社長と二人になった私たちは並んで歩いた。

どうやら社長が1番聞きたいことは、私の元彼の話らしい。

「私の元彼の話、そんなに興味あります?」と私が言うと、

「うん?けっこう面白そうだったから詳しく聞きたいなぁと」と社長は言った。

「じゃあどこか行きましょうか」と私は言ってフラッとお店に入った。

おしゃれなバーっぽかった。立ち飲み可能なお店だけど、私たちはテーブル席に座る。

そして適当に注文した。

「聞きたいことは…?」と私は聞く。

「せっかくなんで、俺も飛鳥さんって呼ばしてもらってもいいかな?」と社長に言われて、「もちろんです」と私は頷いた。

「その…総長だった元彼の話を詳しく聞きたいなぁと思って」と社長は言った。

「…優しくて、かっこ良かったんですよ。イケメンで頼りになって…」と私は言った。

社長は複雑そうな顔をしている。

「暴走族でかなり幹部の人だったの。その時から私は付き合ってて、総長になったから、私は姫という立場になってしまったんだけどね」と私は続けた。

「確か、和人も暴走族やってたとか言ってたけど…その関係の知り合いだったのか?」と社長は言ってきた。

私は何となくだけど、言わないと終わってくれそうに無いような気がして、正直に話す決断をした。

「カズトは私の元彼です。私が敬愛する大好きな人です。男らしく、優しくてカッコいい。頼りになるし、話もよく聞いてくれて、ホントにたくさん甘えてきたんです。何故別れたのかホントにわからないくらいなんです。久しぶりに再会したら変わらずかっこよくて、すぐに仲良くなりました」と私が言うと、

「…そういうことか。で、俺には隠してたわけ?俺の友人だから…」と社長は言う。

「…いつかは言うつもりでした。でも、まだ言える勇気が無かったんです」と私が言うと、

「だからか?知り合いだとは言っときながらアイツも俺に言わなかったのは」と独り言のように社長は呟いた。

「そうです。自分がちゃんと言えるようになったら言いなって。それまでは俺も元彼だってこと言わないようにしとくからってそう言ってくれて…」と私は言う。

「アイツってホントに…紳士でカッコいいよな」と社長は呟いた。

「担当は変えないでくださいね?」と私が言うと、

「まさか、最初からそれ気にしてたのか?」と社長に言われて頷いた。

「飛鳥さんを指名したとき、怪しいって正直思った。ただの知り合いじゃないんだろうなぁって」と社長は言って苦笑い。

「元彼だと知ったら担当外されるとでも思ってたのか?」と社長は言う。

「はい…思ってました」と私は答えた。

「さすがにそれは無い。本人が気まずくて無理だとか言うなら別だが、君らはそんなこと気にもしてないだろう?どころか、ビジネスパートナーとして信頼しあってるだろ?だったら君がアイツのパートナーであることには間違いない」と社長は言った。

私はホッとした。

社長は随分と私を買い被り、カズトを信頼しているようだった。

私たちはその後、しばらく色々語り合った。

圭斗君の将来についても、これからの近い未来についても。

話は尽きることなく、何時間も話した。

昼間からアルコールを体に入れたせいか、思いの外口が回ってしまい、言わなくて良いようなこともついつい口走ってしまう。

それでも笑いながら、聞いてくれて、完璧な心地よい相づち、脱線しても乗ってくれる、社長の話術は頭の良さを感じさせる。そして私はスゴく心地よさを感じた。もっと話していたいと思った。

こんなに人と話すことが楽しいと思えたのは、ホントにカズトと付き合ってた時以来で、何年も忘れていた感覚だった。

ふと、思い立ったように、「二人の2ショットは無いの?」と社長は聞いてきた。

無いはず無い。たくさん写真撮ってホントにたくさん一緒に過ごしてきたんだもん。

でも、多すぎて、どれを見せていいかは分からず、悩んでしまう。