「……」


「……」


隣にいさせてもらってるのはすごくありがたいんだけど、


あのことがあってから、目を見るのでさえも緊張してしまう。


選手が準備している体育館を私たちは見ている。


すると、


「…あのさ、」


隣で、ぼそっとかなちゃんが話し出す。


「…この間はごめん。」


「…え?」


衝撃的な言葉に、私は口が塞がらない。


「なんかあん時、無性にイライラしてて。あんたはなーんにも考えてなさそうで、何しても文句を言わなそうだから、イライラをぶつけた。」


「……」


…そうなんだ


たしかに、、何も考えてないように見えるのも仕方ないよね。


表情変えたりしないもん。


「…でもさ、あん時、渡辺先輩が助けに来たじゃん?その日から、あんたは渡辺先輩の話になると、真剣な顔して耳を傾けてる」


「…え、、」


うそ、、


傍からもそうやって見られてたの!?


「…元カノの話になると、動揺して変な行動し出すし。なんも考えてないわけじゃないんだなって思った。」


…申し訳なさそうな顔をするかなちゃんに、ドキッとする。


きっと、かなちゃんは悪い人なんかじゃない。


純粋に、珀先輩に恋をしている女の子。


「あんたは、無駄に優しくて腹立つけど…人を不快にさせたりしないし、、だから渡辺先輩も気に入ったんだと思うよ、あんたのこと」


「…え?何言って…」


「あんた、珀先輩とか呼ばせてもらってんでしょ?んなの知ってるよだいぶ前から」


…え!?


特に隠してたとかじゃないけど、、なんでだろう


「…ファンの情報は回るの早いんだよ。」


…ファン、、


「かなちゃんって、ファンなの?」


「…は?」


ファンって、なんか、、遠い存在の人を追ってるようなイメージがある。


かなちゃんは、ちょっと違う気がする。


「…かなちゃんは、珀先輩に恋してるんだよね?なんだろう…愛好家とかそういうのじゃなくて、、その…」


私が話していると、


ピーーーー


と、大きな音が鳴る。


きっと、始まりの音だ。


その音とともに大きな歓声が上がる。


「……すごい」


私は試合をしている珀先輩、と高野先輩に目を向ける。


「百合」


…え?


私は、もう一度隣のかなちゃんに目を移した。


今、、え?


「…ありがとう」


少し照れくさそうにそう言うかなちゃん。