柚姫の家の周りに来てみたけど柚姫らしき人物はいない。

「…和詞?」

小さく聞こえた声は隣の公園からだった。

「どこ行ってんだよ。心配かけんな……」

ベンチの上で小さくうずくまっていた柚姫の隣に座った。

「どうしたんだよ…」

柚姫の方を見ながら言った。

「……………………」

「…一回、家に戻ろう……。落ち着いて、ゆっくり話そう。」

頭を撫でながら泣きそうな柚姫の顔を覗き込んだ。

「家には…帰りたくない。」

「じゃあどうすんだよ……」

昨日の向日葵みたいな明るい笑顔を、今日はまだ見ていない。

「………………」

ついには黙る柚姫にため息が出てくる俺。

「ハァ……俺ん家…来るか?」

少したってから小さく頷いた。

ゆっくり歩いている柚姫の歩幅に合わせて歩く。

「柚姫。ついたよ。入って?」

「……お邪魔します。」

一歩だけ玄関に入ってそのまま立っている柚姫の手を握って階段を上がる。

柚姫は俺の部屋に入ってすぐ、俺の肩に顔を埋めてきた。

「…柚姫、おいで?」

俺は小さなクッションに座った。

柚姫は俺の向かいに座った。

「もう………嫌なの。仲良くしてた…クラスの皆が……敵になったみたいで……。私…独りぼっちなの。」

「そんなことない………。」

俺は思いっきり柚姫を抱き締めた。

「柚姫が独りぼっちになんてなるわけないよ。……俺は柚姫の味方なんだから。佑芽も悟も亜依も尋も…皆、柚姫の仲間だよ?」

柚姫が頷くのがわかった。俺は柚姫から離れて柚姫が流した涙を拭いた。